人工繊維はサスティナブルファッションの最良の選択?
何十年もの間、ファッションにおいてコットン、ウール、リネンといった天然繊維はまず選ばれる「定番」素材と見なされてきました。
それらは無垢で、伝統的で、環境に優しいというイメージを今でも持たれています。
しかし、現実はそれほど単純ではありません。
例えば、コットンは「天然素材」でありながら、水の大量使用と農薬への依存で悪名高く、ウールは土壌の健全性と動物愛護への懸念があります。
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そのため、ビスコース、リヨセル、モダール、キュプラのような人工セルロース繊維(MMCF)や、リサイクルポリエステルなどの再生合成繊維といった人工繊維の代替素材に道が開かれることになりました。
これらの素材は、サスティナブルなファッションの次なる注目の素材として推奨されています。
ですが、それは真の解決策になりうるのでしょうか?
人工繊維とは?
人工繊維は大きく2つのグループに分けられます。
1.合成繊維 - 化石燃料から作られる(例:ポリエステル、ナイロン)。
2.人工セルロース繊維(MMCF) - 木材パルプのような天然素材から作られるが、化学薬品を使って高度に加工されたもの。
MMCFは天然素材と合成素材の中間に位置しています。
MMCFは植物由来ですが、柔らかく使いやすい繊維になるよう化学的に処理されています。
潜在的なメリット
カーボンフットプリントの削減:
「How Bad Are Bananas?」という本によると、合成繊維は綿やウールのような天然繊維よりも炭素排出量が少ないことが多いそうです。
その主な理由は、天然繊維の方が、栽培、収穫、加工の段階で、はるかに多くの土地、水、エネルギーを必要とするからです。
例えば綿花栽培のためには、灌漑、肥料、農薬、大規模な土地利用を必要とし、これらすべてが炭素排出の大きな原因となっています。
合成繊維は予想に反して、化石燃料をベースとしながらも、より濃縮された工業プロセスを伴い総カーボンフットプリントが低いのです。(ただし、マイクロプラスチックのような他の影響を考慮せず、単純ににCO₂排出量で測定した場合)
資源使用の削減:
多くのMMCFは、綿花の生産に比べ、水と土地の使用量が少なくて済みます。
クローズド・ループ・システム:
テンセルのように、生産過程で水や化学薬品をリサイクルし、汚染を軽減するものもります。
廃棄物の利用:
キュプラは綿花加工の副産物であるコットンリンターから作られています。
リサイクル合成繊維:
リサイクルポリエステルはプラスチック廃棄物を再利用し、埋立地と海洋プラスチックを削減します。
リスクと課題
森林伐採と生物多様性の損失:
MMCFは木材パルプに依存しており、森林伐採と生態系へのダメージのリスクがあります。
化学汚染:
古い製造方法の場合、特にビスコースから有毒化学物質が放出されてしまいます。
マイクロプラスチック:
合成繊維は洗濯の時もマイクロプラスチックを排出し、海洋汚染の一因となっています。
サプライチェーンの複雑さ:
繊維の原産地を追跡することが難しいことが多く、グリーンウォッシュが一横行してしまう場合があります。
リサイクルの限界:
人工繊維の多くは、特に天然繊維と混紡された場合、リサイクルが難しいか不可能です。
例えば、コットン100%の場合はリサイクルできることが多いですが、ポリエステルと混紡した場合(伸縮性や耐久性を付加するためによく行われる)、現在の技術では一般的にリサイクル不可能となります。
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では、どの素材を選ぶべき?
天然素材は良い、人工素材は悪い、あるいはその逆といった単純な法則を探したくなりますが、現実はもっと複雑です。
合成繊維にしろ合成セルロース繊維にしろ、人工繊維はヒーローでも悪役でもありません。
天然繊維にも人工繊維にも、良い素材と悪い素材があるのです。
例えば
- オーガニックコットンは一般的に従来のコットンよりも優れている。
- リサイクルポリエステルはバージンポリエステルよりも良いことが多い。
- テンセルはクローズドループ生産のおかげで、ほとんどのビスコースより優れている傾向がある。
- 混紡繊維(綿とポリのような)は、たとえ成分自体が責任を持って生産されたものであっても、リサイクルが難しい。
つまり、「天然VS人工」という単純な問題ではなく、それぞれの繊維がどのように、そしてなぜ作られたかが重要なのです。
実践的なアドバイス
ブランドにとっても消費者にとっても、このように考えることは有益です。
・ 長く着られることを優先する
最もサスティナブルな衣服とは、長く愛用し、手入れをすること。
・ 認証をチェックする
オーガニック認証、FSC認証、クローズド・ループ認証など、信頼のおける認証を確認する。
・ リサイクル素材を選ぶ
リサイクル合成繊維やリサイクルコットンを選択することは、バージン資源の使用を減らすのに役立ちます。
・ 可能な限り混紡を避ける
単一素材の衣料品はリサイクルがしやすくなります。
・ 透明性のあるブランドを支持する
素材や生産に関する情報をオープンにしているブランドを選びましょう。
完璧な生地を追い求めるのではなく、より良い選択肢を見つけ、購入したものを最大限に活用することに注力しましょう。
人工繊維は解決策になりうる?
人工繊維は完全な解決策ではありませんが、その一部であることは間違いありません。
責任を持ってデザインされた場合、人工繊維はファッションの二酸化炭素排出量、水使用量、バージン資源への依存を削減するのに役立ちます。
循環型システム、イノベーション、創造的な問題解決の可能性を開くものです。
しかし、その一方でリスクもはらんでいます。
粗悪な調達、不注意な生産、短期的な思考によって、それらを環境負荷に変えてしまう可能性があるのです。
同じことが、サスティナブルではない方法で生産された天然繊維にも言えます。
サスティナブルなファッションとは、天然素材と人工素材のどちらを選ぶかということではなはありません。
- どのように作られた素材か。
- 衣服がどのようにデザインされているか。
- 長持ちするか。
- もう着用できなくなった時、どのように処理されるか。
真のサステイナビリティを目指すのであれば、単に素材を切替えるだけでは不十分なのです。
そのためには、より良い選択、より良いデザイン、そしてファッションが機能するためのより良いシステムが必要です。
人工繊維だけで私たちを救うことはできません。
しかし、私たち消費者は思慮深く選び使用することで、サスティナブルな未来に向けた有意義な役割を果たすことができるのです。
【出典】
https://goodonyou.eco/material-guide-man-made-cellulosic-fibres/
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