サスティナビリティと資本主義は共存できる?

近年、サスティナビリティと資本主義をめぐる議論が活発化しています。

環境問題への取り組みが急務となるなか、現状の経済システムがサスティナブルな未来につながるように進化できるのか、多くの人々が疑問を呈しています。

サスティナビリティと資本主義の関係は複雑かつ多面的です。

一見相反するこの2つは共存できるのでしょうか?

サステイナビリティの重要性

サスティナビリティ(持続可能性)とは、地球の生態系システムを次世代に残し長期的に持続させていこうという考えに根ざしています。

2015年、国連サミットにおいて加盟している全193ヶ国が共通の目標として取り組むべきことと認めた持続可能な開発目標(SDGs)は、人間と自然の両方が繁栄できるバランスを達成するための包括的な枠組みを示しています。

その中心となるのは、壊滅的な環境破壊を防ぐために、地球の生物物理学的境界の中で生きるという考え方です。

そのためには、自然保護と天然資源の責任ある利用に焦点を当て、経済発展へのアプローチ方法を体系的に転換する必要があるのです。

資本主義が環境へ与えるの影響

あくなき利潤追求を特徴とする伝統的な資本主義は、環境のサスティナビリティとは逆の方向に作用することが多いです。

現在の市場経済は環境汚染と膨大な廃棄物を生み出し、気候変動などあらゆる環境危機を引き起こしています。

経済学者ミルトン・フリードマンが広めた株主優位の原則は、社会や環境のウェルビーイングを犠牲にして企業の利益の最大化を促進するものです。

この考え方は、環境コストが外部化される、つまり企業活動の悪影響についてその原因を作った人々が責任を負わないという、持続不可能な慣行につながっています。

汚染者負担原則

持続可能性と資本主義のギャップを埋める重要な考え方に「汚染者負担原則(Polluter Pays Principle)」があります。

これは、環境や人間の健康への被害防止のために、汚染物質を出した者が汚された環境を元に戻すための費用を負担すべきであるというものです。

多くの国際協定や環境政策がこの原則の受け入れを主張していますが、その実施には一貫性がなく、不十分なことが多いのが現状です。

真にサスティナブルな経済を実現するためには、環境コストを内部化することが不可欠であり、企業がそのエコロジカル・フットプリントに対して責任を負うことを保証しなければなりません。

進化する企業目的

実業界を牽引する人々の間では、従来の資本主義モデルを進化させる必要があるという認識が高まってきています。

この転換には、「ステークホルダー資本主義」へのシフトが含まれます。

ステークホルダー資本主義とは、企業の行動によって影響を受けるすべての当事者の利益に配慮すべきという考え方です。

ステークホルダーと呼ばれるこれらの関係者には、従業員、顧客、サプライヤー、地域社会、環境などが含まれます。

この新しいアプローチは、企業は主に株主の利益を優先するという「株主資本主義」に挑戦するものです。

ステークホルダー資本主義は、経済的、社会的、環境的要素をよりバランスよく考慮することが求められます。

ステークホルダーの利害を統合することで、企業はサスティナブルな慣行に沿って事業を展開し、社会と環境の双方にとって長期的な利益を確保することができるのです。

ESG指標の役割

資本主義の中でサスティナブルに企業運営ができているかをはかるためにはESG指標が重要です。

ESGとは、Environmental(環境), Social(社会), Governance(ガバナンス:企業統治)の頭文字を合わせた言葉です。

この指標は、環境への影響を含め企業がどれだけサスティナブルな実践をしているかを測定するためのものです。

しかし、現状でこちらの指標は断片的で標準化されていないことが多く、企業がサスティナブルな取り組みを誇張するグリーンウォッシングのような問題を引き起こしています。

ESG指標が効果的であるためには、正確なベンチマークと説明責任を可能にする、包括的で透明性のある義務的な報告制度が必要でしょう。

政府と政策の介入

政府の政策は、サスティナビリティを資本主義に組み込むためにとても重要です。

政府が厳しい規制をし、サスティナブルな慣行を支援する政策を推し進めることで、よりサスティナブルな経済へと舵をきることができるのです。

これには、ESG報告の義務化、「汚染者負担原則」の実施、サスティナブルな慣行を採用する企業へのインセンティブ付与などが含まれるでしょう。

政策介入は、環境コストが商品やサービス価格に適切に反映されていない市場の現状を正す助けとなるはずです。

前に進むために

サスティナビリティと資本主義を調和させる道のりは困難ですが、不可能ではありません。

そのためには、経済システムとそれを支配するルールを根本的に見直す必要があります。

サスティナブルな市場経済を築くためには、環境や社会への影響を配慮することが経済的な配慮と同等の重みを持つような、経済行動に対する新たな規範と価値観を浸透させることが必要です。

サスティナビリティと資本主義は、お互いにに排他的である必要はありません。

適切な枠組みや政策があれば、経済成長と環境保護を両立させ、サスティナブルな発展を支える経済システムを構築することは可能なはずです。

重要なのは、経済構造を再構築し、経済的成功とともに環境保全も重要視する総合的なアプローチを行うことです。

サスティナブルな未来へ向かうためには、経済成長だけが中心のモデルを見直す必要があるでしょう。


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【出典】

https://sdg-action.org/remaking-capitalism-for-a-sustainable-future/