高級ブランドはどれくらいエシカル?

ラグジュアリーファッションといえば、「独自性」「高品質」「時代を超越した」といった言葉がよく思い浮かびます。

これらのブランドは、職人技、伝統、そしてその魅力の上にその評判を築き上げてきました。

しかし、この華やかなイメージの裏で、これらの高級ブランドは実際のところどの程度エシカルでサスティナブルなのでしょうか?

高額な値札が付けられているにもかかわらず、多くの高級ブランドはエシカルな生産と環境のサスティナビリティの基本的な基準さえ満たしていない場合が多いのです。

魅力に隠された現実

ルイ・ヴィトン、ディオール、フェンディなどのブランドを擁するラグジュアリー・コングロマリットLVMHは、2023年ヨーロッパ企業として初めて5000億米ドルを突破し高級ブランドがもつ絶大なパワーを示しました。

しかし、サスティナビリティを牽引するパワーとはなっていません。

高級ブランド全体の75%が第三者認定機関からサスティナビリティとエシカルな慣行について最低の評価を受けていることが明らかになったのです。

エシカル的基準で著しく落第しているブランドの中には、ルイ・ヴィトン、シャネル、プラダのような業界のリーダーである有名ブランドも含まれています。

ラグジュアリーファッションにおけるサスティナビリティの問題

ラグジュアリーファッションは、ファストファッション大手のSHEINやTEMUのような過剰生産に悩まされることはありませんが、独自のサスティナビリティの課題があります。

ファストファッションについて詳しくはコチラ 
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・人権侵害

ラグジュアリー部門にも、劣悪な労働慣行が蔓延しています。

高級品の職人技というロマンチックなイメージとは裏腹に、多くの商品はフランスやイタリアの工房ではなく、労働力の安い中国などで生産されています。

これは、ハイブランドでお買い物をすればパリのアーティストがあなたのために作ってくれた高級バッグが手に入るという神話を払拭するものです。

2018年、ニューヨーク・タイムズ』紙による調査では、イタリアで在宅労働者が低賃金で契約も保険もなく高級衣料品を生産している「影の経済」が摘発されました。

さらに、2023年のファッション透明性指数(Fashion Transparency Index)では、高級ブランドを含む世界の大手ブランドの99%が、生活賃金を得ている労働者の割合を公表していないことが浮き彫りになりました。

・カーボンフットプリント

ファッション業界がは排出する二酸化炭素は、世界の二酸化炭素排出量の最大10%を占めています。

高級ブランドは最大の違反者ではないものの、大量に排出していることに違いありません。

その多くは、ネット・ゼロ(温室効果ガスの排出量から吸収量や除去量を差し引いて“正味ゼロ“にする)を主張するために、排出量の削減に取り組むのではなくカーボン・オフセットに投資することに頼っている。

グッチやサンローランのようなブランドもそのような動きがみられます。

カーボンオフセットについて詳しくはコチラ
>カーボンニュートラルとエシカルファッション
>カーボンオフセットは真の解決策?

・透明性の欠如

サプライチェーンの透明性はサスティナビリティにとって重要ですが、多くの高級ブランドは生産工程を内密にしています。

この秘密主義が独自の魅力に繋がる一方で、エシカルではない慣行を隠していることもあるのです。

一部のブランドは、希少性を維持するために余剰在庫を焼却処分することで知られていますが、これはサスティナビリティに反する行為であり、消費者の怒りを買い、フランスでは最近法改正がされ禁止さとなりました。

フランスでのサスティナブルな未来に向けた法律について詳しくはコチラ
>政策でファッション業界を浄化する!

・動物の皮革と毛皮

コレクションから毛皮を排除することは進んでいますが、エキゾチックな動物の皮の使用は依然として蔓延しています。

エルメスはワニやクロコダイルの皮を使い続け、しばしば「認証された」サプライチェーンという謳い文句でそれを正当化しています。

しかし、これは高級品のためだけに動物を飼育し殺すことへのエシカルな懸念には対処していません。

クワイエット・ラグジュアリーが正解?

「クワイエット・ラグジュアリー」とは、近年注目を集めている「主張しない贅沢」といトレンドです。

控えめなエレガンスを特徴とし、あからさまなブランディングや派手なロゴよりも、高品質な素材や職人技に重点を置くものです。

シンボルやわかりやすいロゴを強調することの多い伝統的なラグジュアリーファッションとは異なり、クワイエット・ラグジュアリーは繊細で洗練された美的感覚を目指しています。

目立つブランド表示を必要とせず、洗練された雰囲気を醸し出すタイムレスなアイテムに価値を見出す消費者から支持を得ており、長持ちするようデザインされた質の高いアイテムを厳選して投資するという考え方に根ざしています。

これらのアイテムは、クラシックなデザイン、ニュートラルな色合い、優れた職人技を特徴とすることが多いです。

素材の品質と服作りの技術に重点が置かれ、長持ちするワードローブの定番となることでしょう。

理論的には、クワイエット・ラグジュアリーは、消費者が購入量を減らし、丈夫で汎用性の高いアイテムを選ぶことでサスティナビリティを促すことができるはずです。

しかし、現実はもっと複雑です。

ロロ・ピアーナやジル・サンダーなど、クワイエット・ラグジュアリーを代表するブランドは、そのサスティナビリティへの取り組みが批判されており、国際的な評価サイトGood On Youでは、いずれも「十分でない」または2/5の評価を受けています。

これらのブランドは、カシミアやレザーのような素材に大きく依存していることが多く、環境やエシカル面で大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

さらに、クワイエット・ラグジュアリーは時としてアンサスティナブルな慣習を覆い隠してしまうこともあります。

その美学はミニマリスト的であり、生産はより責任を持っているように見えるかもしれませんが、透明性の欠如や非エコフレンドリー素材の継続的な使用は潜在的なサスティナビリティの利点を損なう可能性があるのです。

クワイエット・ラグジュアリーの魅力に惑わされ、消費者がこれらのブランドのエシカル的慣行をしっかりと吟味することを忘れてはいけません。

サスティナブルなラグジュアリーブランド

多くの高級ブランドが芳しくないにもかかわらず、エシカルな実践の模範を示しているブランドがあります。

マギー・マリリン、ステラ・マッカートニー、マザー・オブ・パールは、Good On Youで「Good」または4/5の評価を受けています。

これらの一流ブランドは、責任ある素材の調達、透明性、公正な労働慣行に重点を置いています。

責任ある慣行を受け入れ、より透明性を高める努力をすることで、ラグジュアリーとサスティナビリティが共存できることを示すものです。

彼らは他の高級ブランドが追随すべきベンチマークを示し、高品質でラグジュアリーなファッションがエシカルで環境に優しいものであることを証明しています。

サスティナブルな未来のためにラグジュアリーを再考してみよう

あらゆる点で非エシカルな行為に繋がるものは、真のラグジュアリーとは言えません。

だから、消費者は真のラグジュアリーを選び、買い物を通して自分のお金で「投票」しなければなりません。

高級ブランドには、ファッション業界をサスティナブルな道へ導くだけの資源と影響力があります。

しかし、多くのブランドは十分なことをしていません。

真のサスティナビリティのために、これらのブランドは生活賃金、エシカルな素材調達、サプライチェーンの完全な透明性を確保しなければなりません。

消費者もまた、より高い基準を求め、エシカルな慣行を優先するブランドを支援することで、ファッション業界の道しるべを作る大切な役割を持っているのです。

ラグジュアリーな魅力が、地球や人間の尊厳を犠牲にするものであってはならなりません。

高級ブランドのエシカルな実践を精査し、より高い透明性を提唱することで、私たちは業界をよりサスティナブルな未来へと導くことができます。

消費者としての私たちの選択は重要です。

私たちの購買力をエシカルでサスティナブルな実践に真剣に取り組むブランドを支援するために活用しましょう。

 


【出典】

https://goodonyou.eco/is-luxury-fashion-sustainable/