着古した服の美しさ
エシカルファッションの世界では、サスティナビリティ、意識的な消費、服の寿命を延ばすことなどがよく話題になります。
しかし、本当の意味で私たちと地球の両方にとって良い方法でワードローブを大切にするというのはどういうことなのでしょうか。
急速な流行のサイクルと、最新の輝くアイテムを紹介するソーシャルメディアの絶え間ない発信にさらされる現代社会に生きる私たちは、いつもまっさらな状態の服を着なければならないというプレッシャーにさらされています。
新品同様の状態をキープしようとするこの強迫観念は、使い捨て文化を助長します。
さらには、ファッションは自己表現であり、時を経て進化する個人の歴史であるという本質を損なうものでもあります。
着古した服への反感
最近、服が擦り切れるまで着る人や、自分で服を修理する人がソーシャルメディア上で反感を買っています。
「デザイナーズアイテムを所有する資格がない」「なぜ高価なものを着古すのか」といったコメントが驚くほど一般的になっています。
これらの反応は、歪んだ価値観を浮き彫りにしています。
私たちは、スタイリッシュであるためには、ワードローブを常に新しく、高価なデザイナーズアイテムで更新し続ける必要があると信じ込まされてきたのです。
今や多くの人が誤った認識をしてしまっており、洋服を「くたびれ感」が出るまで着ることをネガティブなことだと捉えてしまっています。
特に、安価な衣料品であれば着古すのもありだけれど、高級品では決して許容できないという風潮がみられます。
しかし、本当の高級品は、これらのアイテムを身につけ、楽しみ、時を経て自分なりの味をだすことこそが醍醐味なのです。
着古すことへの批判は、サスティナビリティを犠牲にしてでも最新のものを賛美する、そして真のスタイルとファッションをも犠牲にしてしまう、容赦ないソーシャルメディアのトレンドのペースに後押しされた比較的新しい現象です。
服を最後まで着ることの価値
サスティナブルな視点で見ると、服を本当に着倒すまで愛用することで、環境フットプリントを大幅に削減することができます。
英国の調査によると、衣類の寿命を9ヶ月延ばすだけで、炭素、水、廃棄物の排出量を20~30%削減できるという。
とはいえ、実際に服を最後まで着ている人はどれ位いるのでしょうか。
転売心理
最近、リスク回避のために転売ありきで服を買う傾向が強まっています。
このような行動は、永遠と消費のサイクルを回し続けるだけでなく、ファッションや購買習慣の心理に関する厄介な真実を明らかにするものです。
それは、ラグジュアリーなアイテムを買う余裕のない人たちが、極端な手段を講じてまで購入しているということです。
中古市場にはサスティナブルな観点からももちろんメリットがあります。
しかし、新品に近いアイテムの回転率の高さは、ファストファッションの考え方を反映しており、再販市場さえも問題の一部となっています。
一部の人々は、衣服を所有し大切に着るのではなく、将来の売却のためにほぼ完璧な状態に保ち投資として服を扱っているのです。
それは、ソーシャルメディアで「夢の」ライフスタイルを送っているという幻想を披露するためだけにこれらのアイテムを購入し、そして次の購入資金を得るために売却している場合もあるのでしょう。
着用感を取り入れる
一方で、着古して体に馴染んだ服の美しさを讃えるトレンドも見られます。
それは、時間の経過とともに生じる擦り切れや傷みが、そのアイテムに個性を与え、より魅力的なものにするという考え方です。
服を大切にするということは、着用せずに保管するということではありません。
衣類を何度も着用しながら、長持ちさせるためにメンテナンスもするという、バランスをとることが大切です。
ファッション性を損なうことなく、愛着のある服を長持ちさせる方法として、修理・修復サービスの人気が高まっています。
多くの場合、真の高級品は一生使えるようにデザインされており、裕福さや階級に関係なく、修理やメンテナンスは当然のことなのです。
風潮を変える
ファッションに対する考え方の風潮を変えなければならなりません。
これからは服を大切にし、着倒すまで愛用することが真のスタイルの証となるでしょう。
しかし、私たちが変える必要があるのは服の扱い方だけではありません。
服に対する考え方そのものを変革が必要なのです。
私達の消費の背後にある「ファッショナブルであるためには、常に新しいものが必要だ」という思い込みが問題の核心です。
ソーシャルメディアの大きな影響を受けているこの考え方こそが、ファッション業界がサスティナブルな未来に向かうために、そしてあらゆる場面において健全な社会に向かうために、変えていかなければいけないものなのです。
今こそ、着古した服の美しさを受け入れる時です。
洋服が語る物語、洋服が持つ思い出、そして洋服が私たちに与える影響を大切にして、よりエシカルでサスティナブルなファッション業界を目指しましょう。
結局のところ、服は擦り切れるまで着るもの。
それでこそ服に命を吹き込むことができるのです。
【出典】
https://www.vogue.co.jp/article/worn-out-clothes
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