米国の免税措置停止:エシカルブランドに大きな打撃

私たちが洋服のコストを考えるとき、セール、割引、季節限定キャンペーンなどを含めた店頭の値札を思い浮かべますよね。

ですが、その馴染み深い数字の裏側で、別の種類のコストが上昇しています。

それは店頭の値札ではなく通関書類に記されるコスト、つまり関税のことです。

主に大量生産やグローバル貿易の大企業を対象としていますが、実はエシカルなブランドに最も大きな打撃を与える可能性があるのです。

このブログでは最近の米国政策の変化にフォーカスしますが、世界的に同じパターンが見られます。

関税が企業の規模やエシカルな慣習の実践度を考慮しない場合、より厳しい圧迫を受けるのは小規模で公正なスローファッションブランドなのです。

何が変わる?

米国の関税における大きな課題は「de minimis(デミニミス)」免税枠の停止です。

これまでは、米国はデミニミス免税基準によりUS$800以下の低価値輸入品は関税なしで国内に持ち込まれることを認めていましたが、20258月にこの規定を停止しました。

このような免税措置は米国だけでなく、EUや日本にも独自の基準があります。

しかし米国では、SheinTemuといったファストファッションプラットフォームがこの免税措置に大きく依存していることから、標的とされました。

ファストファッションブランドは大量の小口荷物を直接消費者に発送し、従来の輸入関税を回避していたのです。

今回の取り締まり強化は、超低価格ファッションの流れを鈍化させることを目的としています。

しかし、問題点があります。

エシカルブランドも少量出荷を行っており、価格帯はファストファッションと同じであることが多いのです。

ですが、規模拡大のために少量出荷をしているファストファッションとは違い、エシカルブランドはサスティナビリティのためにそうしています。

この免税措置がなくなることで、スローメイドのオーガニックTシャツ1箱でさえ、使い捨てファストファッションの大量出荷と同じ課税対象となる可能性があります。

これは、大手企業のようにコストを分散できない小規模ブランドにとって大きな打撃です。

ファストファッション企業が打撃を心配しない理由

大手ファッションブランドは以下のような強みがあります。
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規模の経済:単価コストが安い
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生産の柔軟性:工場や素材を迅速に切り替え可能
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法務チームとロビー活動力:中小ブランドが持たない武器

一方、エシカルブランドの多くは…
•    少量生産
•    透明性のある調達
•    公正な取引契約
•    利益率が低い

エシカルブランドにとって、輸入コストが1530%上昇するだけでも価格引き上げ、在庫削減、あるいは日本や米国といった主要市場への進出停止を余儀なくされる可能性があります。

これは免税措置が撤廃されたことで起こりうる事態なのです。

日本への影響

エシカルコネクションでは、信頼するブランドから厳選した商品を常に少量ずつ輸入しています。

大量仕入れや流行を追わず、何年にもわたって長く愛用できる季節を問わないワードローブの定番品にセレクトしています。

私たちのビジネスモデルは、エシカルで廃棄物が最小限であることを最優先しています。

と言うことは…
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出荷単位あたりのコスト上昇
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コストを相殺する大量在庫の不在、トレンドリスクの高い賭けの回避
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サイズや色のバリエーションの制限
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時間とリソースを消費する通関書類と遅延
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小売価格の上昇、特に円安局面において顕著

最近の米国の関税政策変更は当社に直接的な影響を与えていませんが、国際的な輸入コストの負担、そして規模拡大を前提に構築されたシステムがエシカルな取り組みを静かに阻害する仕組みであると理解しています。

責任ある消費を望む日本の消費者にとって、関税は隠れた障壁となります。

それは、ブランド側に問題があるからではなく、正しい行動が報われにくい仕組みになっているからです。

より広い視点

関税は単なる金銭問題ではありません。

サプライチェーン全体の人々に影響を及ぼすものです。

貿易ルールが突然変更されると、ブランド企業は以下のような行動を取る可能性があります。
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予算内にとどめるため、注文を一時停止またはキャンセルする
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安全や公正な賃金を犠牲にしても、サプライヤーにコスト削減を迫る
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生き残るためだけに、より安価でエシカル性の低い生産形態へ移行する

これまで透明性が当たり前だった工場では、新たな価格への圧力によって長年の努力が台無しになる可能性があります。

はっきり言うと、これらの関税はエシカルファッションを支援するために設計されたものではありません。

これらは経済的手段であり、労働者の福祉のためではなく、国内産業を保護するために導入されるものです。

微妙なニュアンスを欠けば、公正なファッションが存続すること自体が困難になるリスクがあるのです。

私たちにできること

1.    可能な限りエシカルな商品を購入する
海外製か日本製かを問わず、公正なファッションが重視しましょう。

2.    日本製を選ぶ
 
現在エシカルコネクションでは日本ブランドを取り扱っていませんが、地元のエシカルなメーカーをぜひ探してみてください。

3.    価格の意味を理解する
価格アップがすべて利益のためとは限りません。時には単なる生存戦略です。30回以上着用した際のコストを計算してみましょう。それでも高価に感じますか?真の価値はロゴではなく、長持ちする品質にあります。

4.    厳しい質問を投げかけよう
価格設定や調達過程の透明性を求めることは、買い手としてのあなたの権利です。

5.    賢明な貿易政策を支持しよう
政策は搾取から成り立つファストファッションと、正しいことを実践する小規模でエシカルな事業者を区別すべきです。

関税は抽象的な経済政策のように思えるかもしれません。

ですが、特にファッションをより良い方向に変えようと懸命に努力する小規模でエシカルな企業にとって、非常に現実的な影響をもたらします。

透明性が報われ、労働者が公正な賃金を得られ、ファッションが人や地球を犠牲にしない世界を求めるなら、そのビジョンを支える貿易ルールが必要です。

 

【出典】
https://www.businessoffashion.com/opinions/sustainability/tariffs-wont-kill-fast-fashion-but-they-might-kill-sustainable-fashion/



 

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