汚染者負担の原則
「汚染者負担原則」という言葉を聞いたことがありますか。
PPP(Polluter Pays Principle)とも言われるこの言葉を私が初めて耳にしたとき、気候変動に取り組むための素晴らしい解決策であり、正当なアプローチだと感じました。
この考え方はシンプルでありながら強力です。
環境に害をもたらす者は、それを管理するコストを負担すべきだというものです。
それは論理的であるだけでなく、道徳的に正しいことでもあります。
自分が引き起こした損害に責任を持つことは、公正と正義の基本であり、サスティナブルな未来のための正しいアプローチです。
しかし、この原則を実行するのは、口で言うほど簡単なことではありません。
汚染を引き起こした者がその代償を払うのは公平に思えますが、実際には産業界がそのコストを外部化していることが多く、実施するには複雑なこともあるのです。
この原則は、土地、水、空気に影響を及ぼす汚染に関する規制のほとんどを対象としています。
英国の法律では、公害とは、有害な物質または有害な可能性のある物質による土地、水、大気の汚染と定義されています。
「汚染者負担原則」は根本的な転換を提案するものです。
消費者が、生分解性包装、フェアトレードの衣服、再利用可能なコップなど、サスティナブルな製品に対して追加料金を負担することではなく、企業が環境への影響に対して全責任を負うことを求めるものです。
道義的にも理にかなっていますよね。
公害を引き起こした企業は、そのコストを社会に転嫁することはできず、代わりに責任を負うべきです。
これは、重汚染者に対する炭素税の導入、規制の強化、そしてサプライチェーン・コストの全面的な見直しを意味するでしょう。
温室効果ガスが最も重要な理由
しかし、どのようにして汚染を測定するのでしょうか?
プラスチック廃棄物や化学物質の流出など、測定可能な汚染物質は数多くありますが、温室効果ガス(GHG)が選ばれたのは、地球規模で最も重大かつ長期的な影響を及ぼすからです。
二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスは、大気中に熱を閉じ込め、気候変動や異常気象を引き起こし、世界中の生態系や人間の健康に影響を与えるのです。
温室効果ガスは、地球規模での影響力が大きく、その期間も長いため、最も重要な指標となります。
局地的な影響を及ぼす可能性のある他の汚染物質とは異なり、温室効果ガスは数十年、あるいは数世紀にわたって大気中に留まり、すべての人に影響を及ぼします。
大気はしばしばグローバル・コモンズ、すなわち世界規模で人類が共有うする資源とみなされるため、保護責任が最も重要なのです。
さらに、温室効果ガスの排出は大気汚染の原因にもなっており、世界保健機関は、屋外の大気汚染が年間420万人の死亡につながっていると推定しています。
このため、温室効果ガスへの対策は、気候のみならず公衆衛生にも影響を及ぼすので二重の意味で重要なのです。
排出業者が公害のコストを負担しない場合、公害は社会の負担となります。
引き起こされた損害を国民が負担することになりますが、汚染者が責任を問われることはほとんどないのです。
経済学者はこの問題を「市場の失敗」と呼んでいます。
炭素税による原則の適用
汚染者負担原則は、いわゆる「カーボンプライシング」を通じて温室効果ガス排出者に適用することができます。
これは、将来の気候変動によって引き起こされる潜在的なコストに相当する金額を、温室効果ガスの排出に課すもので、排出者に汚染のコストを負担させる、あるいは内部化させるものです。
これは炭素の社会的費用Social Cost of Carbon(SCC)と呼ばれ、多くの主流派経済学者は、炭素の価格付けに最適な方法だと考えています。
また、2050年までに排出量を正味ゼロにするといった、望ましい成果に基づいて炭素価格を設定することもできる。これは一般に目標整合的アプローチと呼ばれています。
汚染業者に炭素価格を負担させるための2つの政策手段があります。
・炭素税: 排出される温室効果ガス1トン当たりに課税される価格ベースの仕組み
・キャップ・アンド・トレード: 排出量に上限(キャップ)を設け、企業その排出枠を取引(トレード)できるようにする割当量に基づく制度。こうすることで、汚染者は、排出量削減が得意な企業から排出枠を買うことができ、全体的な削減を促すことができる。
統一炭素価格は有効か?
どのような手段を取るにしても、多くの経済学者が炭素価格はグローバルで、国やセクターを問わず一律であるべきだと主張しています。
そうすれば、環境規制が緩く制限なしに汚染を続けることができる「汚染回避地」に汚染者が事業を移転することを防ぐことができるのです。
2017年、「カーボン価格化ハイレベル委員会」は、パリ協定(2015年に196カ国が採択した、地球温暖化を2℃上昇以下に抑えることを目指す国際条約)の目標を達成するためには、世界の炭素価格が2030年までにCO2 1トンあたり50~100米ドルに達する必要があると試算しました。
1トンのCO2とは、一般的な自動車での4,700km走行や、東京からドバイまで飛行機で片道移動する際に排出される量に相当するものです。
炭素税を導入している国では、適切な炭素価格に直接税金を設定できます。
キャップ・アンド・トレード制度の場合、排出権の上限を引き締めれば、供給が制限され、気候変動目標に合わせて炭素価格が上がることになります。
責任と説明責任に基づく未来
汚染者負担原則は、単なる金銭的な問題ではなく、道義的責任と説明責任に関するものです。
そしてその説明責任こそが、真の変化をもたらすものなのかもしれません。
消費者である私たちは、最終的にその代償を身にまとう人々にではなく、汚染を生み出す人々に代償を負わせるような政策を提唱する必要があります。
これこそが、ファッション業界のみならず世界全体にとって真にサスティナブルな未来を創造するために必要なシステマチックな変化なのです。
【出典】
https://www.lse.ac.uk/granthaminstitute/explainers/what-is-the-polluter-pays-principle/
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