なぜ英国のフェアトレード市場は日本より大きい?

今やほとんどの人がフェアトレードという言葉を耳にし、その目的について基本的な理解を深めていることでしょう。

フェアトレードは、労働者が公正に扱われていることを保証し、エシカルに生産されていると認定されている製品です。

それは、食料を栽培する農家や衣服を作る職人がその労働に対して公正な賃金を受け取っていることを意味します。

より良い価格、適正な労働条件、そして発展途上国の農家や労働者のための公平な貿易慣行を支援する、よりエシカルでサスティナブルなグローバル市場を創造することに根ざした理念です。

英国では、フェアトレードは1990年代初頭から始まり、瞬く間に英国国民に受け入れられました。

英国は世界的にフェアトレードを最も支持している国のひとつであり、英国の買い物客の3人に1人がフェアトレード製品を購入し、年間10億ポンド(約1930億円)以上の売上があります。

この成功の背景には、Oxfam(オックスファム)やフェアトレード財団のような、エシカルな貿易を提唱する社会運動の歴史があるのです。

学校からメディアでのキャンペーンに至るまで、英国の伝統的な行動主義と強力な消費者教育が、フェアトレードを日常生活に取り入れる後押しをしています。

英国ではフェアトレード製品がスーパーマーケットや小売店などあちこちで入手できるようになました。

それによって、英国の消費者の多くは自分たちの購買習慣によって世界を良い方向へ変化させることができると考え、社会的責任に沿った選択をする力を得たと感じています。

日本のフェアトレード: まったく異なる物語

しかし、日本では話はまったく違います。

フェアトレード製品の消費量は依然としてとても低いのです。

2020年時点、日本におけるフェアトレードの売上高は約43億円でこれは英国の約1/42にすぎません。

日本は人口が英国の2倍以上あり、経済規模も大きいにも関わらずこのような結果となのです。

別の見方をすれば、英国で100人がフェアトレード製品を購入するのに対し、日本ではおよそ1人しか購入しないということです。

つまり、日本でフェアトレード製品を購入している人の数は、英国のわずか1%に過ぎません。

では、なぜ日本はフェアトレードの普及が遅れているのでしょうか。

そこにはいくつかの文化的、経済的要因が絡んでいます。

 1.消費者の意識不足

日本におけるフェアトレード導入の主な障壁は、消費者、特に高齢者層の認識不足です。

一般の人々に広く知れ渡るようなフェアトレードに関するキャンペーンや教育はほとんど行われていません。

日本の多くの消費者、特に年配の消費者は、フェアトレードとは何か、ましてやなぜ買い物の際にフェアトレードを優先すべきなのかさえ知らないかもしれません。

なので、フェアトレードという言葉だけは知っていても、特別な人だけが関わることで自分には関係ないという意識を持っている場合もあるでしょう。

 2.地理的・言語的孤立

日本は地理的にも言語的にも孤立しているのでこの問題は複雑です。

島国であり固有の言語を持つ日本は、グローバルな動き、特に主に英語でコミュニケーションされる動きからやや隔離されています。

グローバルなトレンドに敏感な日本の若い消費者でさえ、日本語でアクセス可能な情報が少ないのでフェアトレードを理解するのは簡単ではないかもしれません。

 3.文化的断絶

文化的なギャップも大きな要因です。

日本の消費者、特に高齢者にとっては、遠い国の労働者を助けるために割高な商品を買うという発想に共感しにくいことが多いのかもしれません。

社会正義とグローバルな公平性に根ざしたフェアトレードのコンセプトは、地元の職人や産業への支援を重視する多くの日本人にとって抽象的で遠いものに感じられるのでしょう。

 4.フェアトレード商品の手に入れにくさ

日本では、フェアトレード商品を一般消費者が目にする機会が英国に比べてはるかに少ないです。

フェアトレード商品の販売は専門店や時折開催されるイベントに限定される傾向があります。

対照的にイギリスでは、大手スーパーや小売店でフェアトレード商品が販売されているので、消費者が日常的な買物にフェアトレード商品を取り入れることが簡単です。

日本では日常的に目にする機会が少ないため、フェアトレードが消費者の購買習慣に自然に溶け込むには至っていないのでしょう。

 5.価格への敏感さ

フェアトレード製品は、そのエシカルな生産方法ゆえに価格が高く設定されることが多いです。

なので、すでに高い生活費に敏感になっている日本の消費者は余分に支払うことに価値を見出せないかもしれません。

日本の多くの家庭にとって手頃な価格は重要な関心事であり、フェアトレード製品を購入する強い動機付けがなければ、価格の安さがエシカルなことよりも優先されるでしょう。

この価格設定の問題は、フェアトレード製品の需要と供給の両方を妨げる可能性があります。

日本での成長のチャンス

これらのような課題はありますが、フェアトレードが日本でもっと普及する兆しがあります。

高まる環境意識

近年、日本でもサステナビリティや環境に配慮した製品への注目が集まっています。

多くの消費者が、プラスチック廃棄物の削減やカーボンフットプリントのような環境問題への意識を高めています。

このような環境責任の高まりは、フェアトレードが成長するチャンスとなります。

フェアトレード製品が他のエココンシャスな選択肢と並んで位置づけられれば、環境意識を持つ消費者を惹きつけることができるでしょう。

フェアトレードをサステナビリティのメッセージと結びつけることで、消費者はフェアトレードをより魅力的に感じるようになるかもしれません。

・ 政府と企業の取り組み

日本におけるフェアトレードの拡大には、大企業と政府の政策が極めて重要な役割を果たす可能性があります。

すでに浸透しつつある企業の社会的責任(CSR)の重要性は、エシカルな取引を企業戦略の最前線に押し上げるのに一役買うでしょう。

同様に、フェアトレード慣行を採用する企業に対する税制優遇措置を通じた政府の支援は、市場の大幅な成長につながるかもしれません。

このような努力の積み重ねは、フェアトレード製品の認知度を高めるとともに、一般消費者にとってより手頃な価格で入手しやすいものとなる後押しになるでしょう。

サステナビリティが注目されるにつれて、今後数年のうちにフェアトレードが日本でも成長すると予想されます。

しかし、どれほど成長できるかは、フェアトレードシステムに参加する重要性を消費者が真に理解できるかどうかにかかっています。

フェアトレードは、単にエシカルなお買い物なだけでなく、日本の消費者にグローバルな公正さとサスティナブルな選択を提供するものです。

多くの人々にフェアトレードを支持することの価値と、地球環境と労働者の双方にプラスの影響を与えられることを明確に理解してもらうことを願います。


【出典】

https://www.kantar.com/uki/Inspiration/Consumer/The-popularity-of-Fairtrade-in-the-UK

 

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