デジタル製品パスポートはファッション界を浄化する鍵になる?
デジタル製品パスポートという考え方は、特にEUが数年以内に義務化する準備を進めていることからファッション業界で注目を集めています。
それは一体どういうものなのかみていきましょう。デジタル製品パスポートとは?
デジタル製品パスポート(Digital Product Passports/DPP)とは、あなた自身のパスポートのようなものだと考えてください。
パスポートには、あなたが誰で、どこにいたかという重要な詳細が記載されていますよね。
デジタル製品パスポートは、ファッション・アイテムに同じような役割を果たします。
素材はどこから来ているのか、どのくらい長持ちするのか、お手入れはどうすればいいのか、修理やリサイクルはどうすればいいのかなど、商品ライフサイクル全体に関する重要な情報が保存されています。
これらの情報はすべて、小売業者、リサイクル業者、消費者のいずれにとっても有益であり、サスティナブルな選択をする鍵となり循環型経済を促進するものです。
EUによるデジタル製品パスポートの推進
EUは繊維製品のような特定のカテゴリーにデジタル製品パスポートを義務付ける可能性のある新規制を主導しています。
この取り組みは2026年頃に展開される予定で、製品に使用されている素材やその製造方法について、より透明性を高めることを目的としています。
まずはEUで展開されますが、サプライチェーンが相互に接続されているためおそらく世界中の企業に影響を与えることでしょう。
どのように機能するのか?
各商品にはQRコードや電子タグのような固有の識別子が付けられ、その商品のデジタル・プロファイルにリンクします。
このプロフィールに生地の含有量からその商品が作られた工場まであらゆる情報が含まれます。
一部の情報は、リサイクル業者など特定のユーザーに制限されるかもしれませんが、目標はサステナビリティ・データを全体的にアクセスしやすくすることです。
何が重要なのか?
デジタル製品パスポートの主な目的は、ブランドが循環型ファッションのモデルに移行する手助けとなることです。
デジタル製品パスポートがあることでアイテムの修理、リサイクル、再利用が容易になり、埋立地行きとなる衣類を減らすことに繋がります。
なぜなら、どのような素材が使用されているかを正確に説明することで、企業は環境への影響をより適切に管理することができ、消費者は自分が購入する製品について、より多くの情報に基づいた決定を下すことができるからです。
例えば、ジャケットのコードをスキャンすれば、綿花がどこで栽培されたのか、製造にどれだけのエネルギーが使われたのか、リサイクル可能かどうかがわかるでしょう。
このような透明性こそが、ファッション業界をよりサスティナブルな方向へとシフトさせる鍵となるのです。
前途多難
しかし、乗り越えなければならない大きなハードルもあります。
ひとつは、特に小規模ブランドにとって、こうしたシステムを導入するためのコストが高いことです。
パスポートに必要なすべてのデータを保存・管理するには、時間とコストがかかります。
また、消費者がこのデータを実際に利用するかどうかという問題もあります。
消費者が店頭で商品をスキャンし、すべての詳細情報に目を通すでしょうか?
また、仮にそうだとしても、それを十分に理解することができるのでしょうか…?
デジタル製品パスポートはファッションに透明性をもたらす可能性を秘めていますが、まだ解決すべき課題は多いのが現実です。
消費者がよりスマートでサスティナブルな選択をする手助けになることは間違いありません。
しかしそれは、業界が支持し、消費者がそれを使いやすいと感じた場合に限られるでしょう。
それでも、これは正しい方向へ進むための大きな一歩です。
オランダが建設業界に先駆的な「マテリアル・パスポート」を導入し、特定の建築物に使用されている材料を追跡し始めたように、デジタル製品パスポートはファッションをより循環型にするための重要な鍵となるでしょう。
消費者が、素材がどこから来てどのように製品が作られたかをより明確に把握できるようになるため、消費者が迅速にブランドの製造慣行に対する責任を問えるようになります。
それは、ブランドに自浄作用を促しグリーンウォッシュをより困難にする助けとなるでしょう。