グリーンハッシング〜ファッション業界の新たな欺き

これまで、消費者は「グリーンウォッシング」に警戒心を抱いてきました。

企業が環境に配慮をしていることを誇張し、偽りの主張をすることに注意を払ってきたのです。

そうして、監視の基準が厳しくなり消費者の意識も高まるにつれ、たくさんのブランドが不可解な方向へ180度転換し始めました。

環境に配慮した成果を誇張する代わりに、それを隠し「グリーンハッシング」というはぐらかしをするようになりました。

>グリーンウォッシングについてはこちら
グリーンウォッシュに要注意!2023年エシカルな消費者であるために

グリーンハッシングって何?

グリーンハッシングとは企業が環境への取り組みについて意図的に沈黙を守ることです。

サスティナブルな未来に向けた取り組みをし、謙虚な姿勢を示すことではありません。

多くの場合、この沈黙は、自社の取り組みが精査に耐えないかもしれない、もしくは以前の主張が誇張されていたかもしれないという認識によるものです。

消費者の監視意識が高まるにつれ、このようなブランドは、反発を生むよりも無名であることを選ぶのです。

グリーンウォッシングVSグリーンハッシング

グリーンウォッシングが企業の環境への取り組みを誇張したり虚偽に表現したりすることであるのに対し、グリーンハッシングは環境への取り組みを過小評価したり隠したりすることです。

どちらも、近年の環境意識の高い市場において重要な透明性の原則に反するものです。

なぜ、企業はグリーンハッシングをするの?

サスティナビリティに対するこの沈黙のアプローチには理由があります。

1.露呈を恐れる
環境に配慮いた取り組みをアピールすることで、逆に配慮できていない点に注目が集まる可能性がある。

2.基準が厳しい
監視機関が厳しい基準を設けているため、ブランドが実質的なエビデンスなしに環境に配慮したと主張をすることは難しくなっている。

3.グリーンウォッシングの非難をかわす
環境に関する主張に対する懐疑的な見方が強まるなか、疑惑を避けるために脚光を浴びないことを好むブランドもある。

4.戦略的ポジショニング
グリーン戦略が完全にビジネスモデルに組み込まれた段階で、より大規模な取り組みを公開する計画を立てている可能性がある。

5.真の謙虚さ
ブランドによっては、喝采を浴びることを必要とせず、良い変化をもたらすことを純粋に信じている場合もある。

グリーンハッシングの実例

● 悪い例:ASOS (英国のファッションブランド)
ASOSがサスティナブルラインをやめたのは、イギリスの市場当局によるサスティナビリティの主張に対する調査が間近に迫っている時でした。

それは、調査やグリーンウォッシングの疑惑を回避しようとしていることを示唆するものです。

疑惑の目を向けられる可能性を避け、自分たちの立場を明確にする代わりにサスティナビリティへの取り組みを主張することを辞めることを選択するという、明らかなグリーンハッシングの例です。

● 良い例:パタゴニア
パタゴニアはサスティナブルなファッション・ムーブメントの先導を走ってきた存在です。

パタゴニアの長年に渡る環境に優しい取り組みは称賛に値するものです。

利益の大部分を環境保護活動に寄付したり、リサイクル素材を使用したりといった取り組みを通じて、パタゴニアは大きく前進してきました。

しかし、彼らは賞賛されることよりも行動を重視し、今もゴールなき道を進んでいます。

この対比は、ブランドがグリーンハッシングを行う際に、さまざまな動機や戦略がある可能性があることを示す例です。

純粋に宣伝よりも環境への貢献を優先するブランドもあれば、沈黙を批判からの盾として、あるいは消費者層を欺くために利用するブランドもあるのです。

グリーンハッシングの危険性

1.透明性を損なう
サスティナビリティへの取り組みについて沈黙を守ることを選択することは、企業の情報開示が最小限になることが常態化する原因となる可能性があります。

そうすることで消費者の信頼と気候変動に対する私たちの集団的な取り組みに影響を与えるリスクがあるのです。

2.進歩を阻む
サスティナビリティへの取り組みの過程や成果を共有しなければ、業界は指標や洞察力を失い、進歩の足取りが鈍くなる能性があります。

3.消費者が選択肢を失う
サスティナビリティの証明が明らかではなくなるので、消費者は情報を得られず純粋にサスティナブルなブランドを支持することができなくなってしまう。

グリーンハッシングの唯一の長所

ブランドによっては、その取り組みをアピールしないことで、より真摯に取り組んでいるように見えることがあります。

また、PRのプレッシャーから解放されることでブランドはサスティナブルのための施策を効果的に実行しやすくなります。

バランスの重要性

環境への責任を提唱するには、ブランドは適切なバランスをとらなければならなりません。

沈黙は有害になりうるものです。

実行したことや成果、さらには失敗を共有することは、全体的な成長につながり、業界全体を刺激する可能性があります。

グリーンハッシングは、グリーンウォッシュと比較すると軽微ではありますが、独自の課題を提示しています。

企業は相互関係の深い現代において、自らの選択を口に出すか出さないかにかかわらず、大きな反響を呼ぶことを認識しなければなりません。

企業は、あからさまな宣伝と危険な沈黙の間のバランスを見つけることが大切です。

前に進むために、透明性と責任を持って消費者や仲間を導くことが重要なのです。

 

 【出典】

https://goodonyou.eco/greenhushing-a-dangerous-step-backwards/

https://www.retaildetail.eu/news/general/asos-haalt-in-alle-stilte-duurzaamheidsclaims-weg/#:~:text=Asos%20admits%20it%20has%20proactively,quoted%20a%20response%20by%20Asos.