ビスコースは世界で最も誤解されている素材?

もし「この素材で何を連想しますか?」と尋ねたら、多くの人はおそらくこのように答えるでしょう。

ポリエステル? 安っぽい、プラスチック、環境に悪い。

シルク? 高級、美しい、高価。

オーガニックコットン? 自然、エシカル、サステナブル。

では、ビスコースはどうでしょうか?

多くの人にとって、答えは「よくわからない」というものでしょう。

これは意外なことです。というのも、ビスコースは世界で最も広く使用されている生地の一つだからです。

おそらく、あなたも気づかないうちに、ビスコース製の服をすでに持っているはずです。

しかし、これほど一般的であるにもかかわらず、ビスコースはよく理解されていません。

どこから来るのでしょうか?天然素材それとも合成素材?サステナブル?

ビスコースを知ることは、もっと大きな学びにつながります。

ファッション素材は「良い」か「悪い」か単純に分けられるものではありません。

ビスコースとは一体何なのでしょうか?なぜ発明され、どこで見つけることができるのでしょうか?そして、私たちはそれを買うべきなのでしょうか?

これらの疑問に向き合っていきましょう。

従来のカテゴリー外の素材

多くの人は、生地を大きく2つのグループに分類されると考えています。

天然繊維:植物や動物から直接得られる素材

•    綿
•   
ウール
•   

•   
ヘンプ
•   
シルク

合成繊維:主に化石燃料から作られる人口素材

•    ポリエステル
•   
ナイロン
•   
アクリル
•   
エラスタン

では、ビスコースはどちらに分類されるのでしょうか?

実は、その答えは……どちらのカテゴリーにもすんなりとは当てはまらないのです。

ビスコースは「再生セルロース繊維(MMCF)」と呼ばれるグループに属しています。

これは、植物由来のセルロースを原料としていますが、化学的な加工を経て作られる繊維です。

つまり、ビスコースはもともと木から生まれます。ユーカリ、ブナ、マツなどの樹種から得られる木材が原料となります。

その意味では、その起源は完全に天然のものと言えます。

しかし、その木材はその後、セルロースに分解され、化学薬品を用いて溶解され、まったく新しい繊維として再生されます。

生地となる段階では、間違いなく人工的なものとなっています。

そこがビスコースの興味深い点です。

天然の原料と現代の科学技術を組み合わせているため、従来の天然繊維でもなければ、合成プラスチック繊維でもないのです。

多くの人がビスコースを分類しづらいと感じる理由はこの独特の成り立ちが理由です。

>人口繊維と天然繊維について詳しくはこちら
人工繊維はサスティナブルファッションの最良の選択?

ビスコースが発明された理由

私もその理由を調べてみて、その答えには驚かされました。

ビスコースは、環境保護やプラスチックの代替、あるいは気候変動対策のために発明されたわけではありません。

1892年、3人の英国人化学者によって、シルクに代わる手頃な価格の素材としてビスコースは開発されました。

当時、シルクは美しく、柔らかく、高級感にあふれていましたが、同時に高価でした。

メーカーは、シルクのような見た目で上品なドレープを持ち、かつ大量に生産できる生地を求めていました。

その答えとなったのがビスコースだったのです。

130年以上経った今でも、ビスコースは当時とほぼ同じ理由で高く評価されています。

柔らかく、滑らかで、通気性があり、美しいドレープを醸し出し、本物のシルクの数分の1のコストで、シルクのような見た目の服を実現できるのです。

ビスコースは今どこで使われている?

ビスコースは、世界で最も広く使用されているファッション用繊維の一つですが、多くの人は自分がそれを着ていることに気づいていません。

というのも、綿やポリエステルといった繊維とは異なり、ビスコースは衣服の素材の主役になるというよりも、着心地や見た目を良くするために使用されることが多いのです。

もちろん、100%ビスコースで作られた衣類、特にその柔らかな肌触りと優雅なドレープが最も評価されるドレス、ブラウス、シャツ、スカーフなどを見かけることもあります。

しかし、より一般的なのは、ビスコースはき心地や見た目を良くするために他の素材と組み合わせて使用されることが多いのです。

例えば:

•    ビスコース+ポリエステル
ビスコースの柔らかさと、ポリエステルの耐久性、しわになりにくさ、型崩れしにくい特性を兼ね備えています。

•    ビスコース+エラスタン
 
ビスコースの柔らかさと通気性、エラスタンの伸縮性と柔軟性を兼ね備えています。

•    ビスコース+コットン
コットンの強さと、ビスコースの柔らかさや流れるようなドレープ感を兼ね備えています。

•    ビスコース+リネン
リネンのハリの強さと、ビスコースの柔らかとドレープ感を兼ね備えています。

•    ビスコース+ウール
ウールの暖かさと天然の保温性に、ビスコースの滑らかさとドレープ感を兼ね備えています。

ビスコースは手頃な価格のファストファッションから高級デザイナーブランドまで、幅広く使われている素材です。

この繊維自体は、安価でも高級でもありません。

デザイナーたちがビスコースを選ぶ理由は、その柔らかさ、通気性、発色の良さ、そして衣服に美しいドレープ感を与える特性にあるのです。

多くのファッション素材と同様に、「ビスコース」という名称だけでは、その服の質や背景はほとんどわかりません。

繊維は、あくまでストーリーの一部に過ぎないのです。

衣服の品質やサステナビリティは、その原料の調達方法、製造方法、そして使用方法に大きく左右されるのです。

では、ビスコースはサスティナブルなの?

ここから話が少し複雑になってきます。

ビスコースはもともと木から作られるため、多くの人は「きっとサステナブルに違いない」と決めつけてしまいがちです。

何しろ、木は再生可能な資源ですから。

ですが、残念ながら答えはそれほど単純ではありません。

ビスコースをめぐる最大の環境問題は、木そのものではなく、その繊維がどのように生産されるかという点にあります。

かつて、一部のメーカーは原生林や絶滅危惧種の生息する森林から木材パルプを調達しており、森林破壊や生物多様性の喪失の一因となっていました。

また、従来の生産方法では大量の化学物質が使用されており、管理が不十分な場合水質汚染を引き起こしたり、労働者の健康を脅かしたりする恐れがあります。

つまり、ビスコースは自然由来の原料から作られているとはいえ、それだけではサステナブルな選択肢とは言えません。

幸いなことに、ビスコースは必ずしもこのような方法で生産される必要はありません。

今日、多くのメーカーが責任を持って管理が行われている森林から木材を調達し、化学物質の回収率を改善したより環境に配慮した生産方法を採用しています。

TENCEL™ リヨセルやモーダルといった繊維が、高い評価を得ているのもこの点にあります。

これらは同じ「再生セルロース繊維(MMCF)」の仲間ですが、一般的に、より環境に配慮したプロセスで生産されています。

つまり、ビスコースは「良い」とか「悪い」と一概に決められるものではありません。

多くの素材と同様に、その環境への影響は、原料の調達や製造がどれほど責任を持って行われているかに大きく左右されます。

>TENCEL™やその他のエシカル素材についてはこちら
エシカルなファッション素材〜竹、麻、そしてその先へ

長年にわたり、私たちの多くは「天然繊維=良い「人工繊維=悪い」と捉えてきました。

ポリエステルは悪役、オーガニックコットンはヒーローと見なされる一方で、ビスコースはその中間、そんなイメージを持つ人も多いでしょう。

しかし、実際はもっと複雑です。

ビスコースはもともと木から生まれますが、生地になるためには現代の科学や技術の力が必要です。

その調達方法や製造方法次第で、問題の一因にも、解決策の一部にもなり得るのです。

これまでブログでもエシカル素材について取り上げてきたように、ウール、テンセル、そして合成繊維など、サステナビリティは白か黒か単純に割り切れるものではありません。

「これは何からできているのか?」

ではなく

「どのように作られたのか?」

と問うほうが、おそらくより適切なのではないでしょうか。

このように視点を変えてることで、ラベルに記載された素材名よりもずっと、その衣服が環境に与える影響にを深く理解できるようになるのです。


【出典】
https://goodonyou.eco/material-guide-viscose-sustainability/

https://textileexchange.org/viscose/

https://cfda.com/resources/materials-hub/article/fiber-guide-rayon/

 

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